こちら新しく新設された民放458条の2によるものです。
たとえば、賃貸借契約の保証人から、主たる債務者(入居者)等について、
支払いが適切に行われているか等々の状況を問われた場合に、
それに回答する義務を負うことになります。
こちらの法律の条文が新しく新設されたわけですが、
このような条文がないとの何が問題だったのでしょうか。
まず、保証人にとって、主債務の履行状況は重要な関心事です。
なぜなら、当たり前ですが、保証人というのは、
主債務者がその支払いを怠った場合には、代わりに支払いを行わなければならないからです。
そのうえ、たとえば、単に主債務者が賃料を3か月分15万円遅滞していたとすると、
法律上、厳密にいえばその15万円だけでなく、それに加えて、
支払いが遅れたことによる損害金なども支払い義務を負います。
とすると、保証人が知らないままに未払いがたまっていって、
さらに、そこに遅延損害金がついてしまっているなどの事態にもなりかねません。
保証人からすれば、
もっと早くわかっていたら遅延損害金がつくまでに支払っていたのに、、、
という気持ちになるでしょう。
このように、保証人としては関心事ですから、
債権者に対し、支払い状況がどのようになっているのか等々について、
問い合わせをして知りたいという気持ちになります。
ですが、問い合わせを受けた銀行等や賃貸人等の債権者からすると、
支払い状況を回答してよいのか、という問題に直面してしまいます。
どういうことかというと、あくまでも法律上、
債務者と保証人は別の人格です。
そうなると、債務者に関する個人情報等やプライバシーに関わる事情について、
あくまでも「第三者」である保証人に対して開示してよいのかという問題が生じます
(個人情報保護法の個人データを同意なく第三者に提供してよいのかどうか
の例外(財産上の保護)等に該当するとしてよいのかどうか、といった判断が出てくる。)。
これでは、保証人に対して円滑に取引情報が提供されません。
そこで、債権法改正により、情報提供義務についての条文が加えられ、
債権者が保証人に債務者の取引上の情報を提供してよい、
というか、しなければならない、という規程が定められたのです。
条文は以下のとおりです。
(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務)
第458条の2
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、
保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、
主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、
違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての
不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が
到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。
ポイントは以下の3つです。
-
①委託を受けて保証した場合に限ること
→ 保証契約には、債務者からの委託を受けた場合
(保証人になってくれと頼まれて契約したくらいの意味)とそうでないものがあり、
民法上区別されているのですが、情報提供義務を負うのは
委託を受けた保証人に対してのみです。
賃貸借契約書や保証契約書上に委託を受けて
保証人となっていることが明らかとなるような文言がある場合や、
ない場合でも、同一の賃貸借契約書上において
賃借人も保証人も署名捺印しているような場合は、
通常は、委託を受けて保証していると考えることができると思われます。
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②保証人の請求があったとき
→保証人から開示してくれと請求があったときに情報提供義務が生じます。
- ③開示すべき項目
主たる債務の元本、利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべての者
についての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち
弁済期が到来しているものの額に関する情報
→ 保証債務の範囲は、民法447条において
「保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。」
と主たる債務者の負う債務の一切にあたります。
そのため、開示すべき情報についても、
上記のとおり幅広い情報について情報提供する義務を負います。
-
遅滞なく・・・開示しなければならない
→ いつまでにという確定した期限はありませんが、
「遅滞なく」開示しなければならないことになっています。
*本記事は2019年4月執筆時での法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。
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